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Sketch

ーもしも愛がすばらしいなら

人魚のお姫様と人間の王子様(下)

 そんなある日、王子様の元に、幼いころから長年探していた魔法使いが見つかったという連絡が入りました。王子様はすぐに魔法使いを呼び寄せました。幼いころからの夢が叶うかもしれないと、王子様は興奮していました。魔法使いに会うと、「もしも願いを叶えてくれるのなら、褒美はなんでも好きなだけ与えよう」、と言いました。すると、みすぼらしい格好をした、とても小さな(そしてとても歳をとっているように見える)魔法使いは答えました。「褒美は何もいりません。ただ、誰かを幸せにしたいだけなのです」、と。「ただ、もし可能ならば、あの美しい海をもう一度この目にすることができれば」、と誰にも聞こえないほどの声で、小さくつぶやきました。

 王子様はかつて恋した、親友の恋人と、小さな魔法使いを船にのせて人魚のお姫様が待つ美しい海へと向かいました。人魚のお姫様は、この話を聞くと、すごくすごく疑いました。かつて、私のひいひいひいひいひいひいおばあさんの妹が、悪い魔法使いにその美しい声と命を取られてしまったのよ、と伝えました。すると、魔法使いは言いました。その悪い魔法使いは、遠い昔の私なのです、と。みんなが驚くと、魔法使いは続けました。その後も、海の美しい物を集め続けたけれど、ある日、美しい海から追い出されてしまいました。1000個の、本当に大切な願い事を叶えるまでは、もう戻ってきてはならないと。それからはずっと、不慣れな地上で、美しい海を恋しく思いながら過ごしてきました。自分の愚かさと貪欲さを悔い、それからずっと、みんなを幸せにするためだけに魔法を使ってきました。今日が1000回目になります、もしもみなさんを本当に幸せにできるのなら、どうか魔法を使わせて下さい、と。

 すると、マリアが泣いて王子様と魔法使いにお願いをしました。どうか私を人魚に変えてください。愛する人と共に過ごせるように、と。王子様がうなずき、魔法使いはマリアを人魚に変え、海の中の愛するお姫様の元へと送り出しました。魔法使いは、愛しあう2人に願いました。「私が海へと戻れるように、かつて私が奪ってしまったものをお返しさせてください」、と。そうして、マリアとお姫様は、1つの小さないのちと美しい声を授かりました。小さないのちは、2人の家族になり、美しい声は、かつてから声を欲しがっていた、そして小さな赤ちゃん人魚と遊んでくれるイルカたちへと贈りました。

 そうして、マリアとお姫様は海の奥深くで、小さな赤ちゃん人魚をかこんで、盛大に結婚式をあげました。魔法使いもやっと美しい海に戻れました。そしてそのお礼に、1日でも海を自由に泳ぎまわりたいという王子様の願いを叶え、王子様は親友とその愛する人と子どもの幸せな結婚式を見守りました。翌日、王子様も自分の愛する人と結婚式をあげ、海からは今まで見たことのないような、美しい真珠や貝殻でこしらえた、素敵な贈り物が届きました。

 後に、お姫様は女王様となり、国をおさめ、王子様も王様となり国をおさめました。2人は生涯友人であり続け、愛する家族と、それはそれは幸せに暮らしました。

 むかしむかしの、近くて遠い国でのお話でした。

 

NORA