Sketch

ーもしも愛がすばらしいなら

人魚のお姫様と人間の王子様(上)

 むかしむかし、ある国で1人の王子様が産まれました。ちょうど同じころ、その国とつながった砂浜のはるか向こう、海の中で、1人のお姫様が産まれました。

 2つの国は、まったく別々の国でしたし、一方には人間が、一方には人魚が住んでいたのですが、「お隣さん」ということもあり、両方の国から、両方の国に、お祝いの言葉が贈られました。

 

 さて、王子様は小さなころから、船で海へと出るのが大好きでした。よく晴れた、波の穏やかな日には、ワクワクして海へと出かけました。また、お姫様もお城のある海の深い所から、波が太陽に直接当たってキラキラと光って見える海の水面へ出て、広い海を自由に泳ぎまわるのが大好きでした。そういうわけで、2人の王子様とお姫様はお互いのことを知っていて、そしてとても仲のいい友だちでした。おだやかな波の日、2人が海の中からも上からもキレイに波が見える場所に出かけるのが好きなのは、親友に会えるからでもあったのです。

 

 王子様は、ずっと思っていました。いつか、彼女のように、自由にあのキレイな海を泳ぎまわることができたらなぁ、と。そうしたら、友だちのお姫様とも、もっと色々なことができるでしょう。なので、王子様は小さな頃からずっと、そんな魔法を使える魔法使いを探していました。もっとも、本当にそんな魔法があるのか、王子様にはまったく分かりませんでしたが。

 

 お姫様は、海の中には人魚を人間へと変えることの出来る魔法使いがいるのを知っていました。むかしむかし、お姫様が産まれるずっと前に、悪い魔法使いが、ある人魚の命を奪ったと聞いていたのです。だから、お姫様は魔法使いを見つけても、絶対にお願いごとなんかしない、と思っていました。もっとも、お姫様は自由に海を泳ぎまわるのが大好きだったので、人間にはなりたくなかったし、その悪い魔法使いがまだ生きているのかも分かりませんでしたが。

 

 さて、時が流れて、王子様は人間のまま、お姫様は人魚のまま、そして2人は親友のまま、成長していきました。2人は互いの国の話や、最近起きた楽しいこと(お姫様が寝ている時に、いたずら好きの弟が、クジラの潮吹きの上に連れて行って、空高く飛び上がった所で目が覚めたこと、王子様の国に来た、遠くの国からの物売りが、「1日だけ人魚になれる薬」を売っていたが、実際に飲んでみると、ただしゃっくりが止まらなくなっただけだったこと)、そしてほんの時々には、相談ごともしていました。

 

 ある時、王子様は恋をしたと、人魚のお姫様に打ち明けました。王子様の国の、村の奥深くに住む女性でした。とてもすてきな女性で、王子様はいつか人魚のお姫様に、彼の恋人となる人を紹介したいと話しました。お姫様はとても喜びました。そして、あまりにも王子様がいつもと違い、相手の小さな行動で悩み、幸せそうで、興奮したりしているので、とても面白くて、愛情をもってたくさん王子様をからかい、そして、きっと大丈夫だ、と励ましてやりました。

 

 さて、王子様の国では、産まれたときに1番花がよく咲いていた人が、将来の王様か、王女様になります。お姫様の国では、魚たちが1番踊り喜んだ日に産まれた人魚が、将来の王女様か、王様になります。そして、2人ともその1番の日に産まれたので、王子様はいつか王様に、お姫様はいつか王女様になることが決まっていました。

 

 また、王子様の国では若い内に結婚するのが習わしで、王子様も恋をした人と早く結婚したいと思っているようでした。お姫様の国では、結婚はいつしてもよく、しなくてもいいものでした。そして、お姫様は今は恋に興味がありませんでした。