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Sketch

ーもしも愛がすばらしいなら

イアン・マキューアン『黒い犬』

楽しめる本を見つけたら、読み始めのうちに紹介してしまうというクセ。

 

この『黒い犬』(うつ病のとは違う本です)は数ページで面白い!と思い、20ページ目を読み始めたさっき、号泣してしまいました。

 

これからどんな展開になっていくのか。タイトルの「黒い犬」がどう関わっていくのか分からないけれど、読むのが楽しみな本に出会えて嬉しいです。

 

著者は英国ハンプシャー生まれの作家。

 

以下、19ページからの引用


そのあとも一つの場所に留まることができず、仕事や、友だちや、恋人から去り続けて、何年もの歳月が流れた。ときには誰かの両親と仲よくなり、癒やしようのない子供じみた帰属意識の欠如を埋めることもあった。招き入れられたときは、生きている実感が湧くものの、性懲りもなく私はまた去っていった。
 そんな情けない錯乱の日々は結婚によって終わりを告げた。私は三十代の半ばになっていた。相手はジェニー・トレメインという女性で、そのときから生きることが始まった。シルヴィア・プラスの言葉を借りれば、愛が私を後押ししてくれたのである。ついに私は人生の懐に飛び込むことができた。いや、もしかしたら、人生が私の懐に飛び込んできたのかもしれない。失われた親を取り戻す一番簡単な方法は、自分が親になることだ。サリーとの経験から私はそれを学んでいたに違いない。自分の中にいる見捨てられた子供を救うには、自分で子供を作り、愛すること、それが一番だ。