Sketch

ーもしも愛がすばらしいなら

「あなた」へ

 多分、今これを読んでいる「あなた」は、気がつかないだろう。私がこれからする話が、あなたのことだとは。

 

 私は知っている。あなたが、苦しみながら、今の道にたどり着いたことを。時に人は信じられなく、未来は考えたくない、怖ろしいものだったことを。だけど、長い道のりを経て、あなたは今のあなたとして、生きることを選んだ。カミングアウトや、それにまつわるさまざまな出来事も、あなたにとって辛いものだったかもしれない。おそらく、だからあなたは、ボロボロになった私の憧れで、そして救いなのだ。


 私達はときに抱えた秘密に苦しめられる。特にその秘密が、社会によって秘密であることを求められる性質を持っている以上。性については、未だに差別や偏見がはびこる中、精神的に追いつめられていったのは、きっとあなたや私だけではなかったはずだ。


 初めて私が、「自分はゲイです」「トランスジェンダーです」と、大勢の前で自らのセクシャリティを明らかにして話し始めたあなたを見た時には、衝撃と憧れが私を襲った。自分のセクシャリティを隠しながら性的マイノリティ関連の講座に参加していたときだった。今、多分どうしてあなたがあそこで、自分のセクシャリティを告げたのか、痛みと共に分かる気がする。そしてやはり、だからこそ、あなたは今も私にとって輝き続けているのだろう。


 一人で悩み苦しんでいたときに出会った仲間たち。自身の苦悩した過去や、今の生活を見せてくれ、いつしか私の手にも、ささやかな未来への希望と、安息の場所を握らせてくれた。


 あなたには、あなたの姿が見えているだろうか。私が憧れ、力をもらったあなたの姿を。そして、今悩み苦しんでいることで、他の誰かの救いとなっているあなたの姿を。