Sketch

ーもしも愛がすばらしいなら

ウサギとカメ

むかしむかし、あるところに、小さなウサギと大きなカメがいました。

 

ウサギは野原で、カメは海で暮らしていたので、生涯のほとんどを出会うことなく暮らしていました。

 

けれど、ある日、ウサギは野原の端っこに行ってみたくなりました。

 

カメは海の、砂浜の端っこよりはるか向こう、陸が続く道をたどりたくなりました。もうすぐ人生が終わると知っていたから、かつてからやりたかったことを、やってみたかったのです。

 

海がない世界は怖いけど、もう人生が終わるので、カメは残り少ない命と共に歩み続けました。

 

ウサギは、ある日、野原の端っこよりはるか向こうに、キラリと光る生き物を見て、胸を打たれました。理由など分からなかったけれど、そのキラリと光る生き物に、近寄らずにはいられませんでした。

 

カメが人生の終盤とともに、野原にたどりついたとき、ウサギはそのキラリと光る生き物にたどりつきました。

 

ウサギはまだまだ野原でかけまわるつもりだったし、野原ほど素晴らしいところから動きたくなかったけれど、胸の鼓動に押されて、その生き物に近づきました。

 

カメはゆっくりと。そして確実に進んでいました。けれど動く度に、歩みはより、ゆっくりとペースを落としていきます。

 

ウサギはカメが、動く度に、輝きを増していくのを見ました。そしてその生き物に、ただただ感動しました。

 

ウサギは遠くからその生き物を見つめ、まだ乾かぬ足あとをたどり、カメが歩み出てきた場所へと向かいました。

 

その時、カメは遠くに光り始めた物体を見て、嬉しくなって、その生涯を閉じました。