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Sketch

ーもしも愛がすばらしいなら

理想や常識よりも、自分の喜びを生きていける社会が、私はほしいー【詩】わたしを束ねないで

紹介したい

本来、どんな人も、どんな関係性も、それぞれが特別で、多様性に満ち溢れている。幸せの形だって、それぞれだ。セクシャリティを問わず、今を生きている誰もが、理想や常識の枠組みに、大切な「私」を収め(られ)ることなく、自分の喜びを生きてほしい。誰一人の例外なく、そう願う。多様な性や人を認め合い、尊重する社会は、一人の人間の存在や幸せと、真剣に向き合おうとする社会だと、私は思う。
 

 

年始、苦しみながらコラムを書いたときに、大切な友だちがある「詩」を紹介してくれた。彼女は小学校の頃に見て感動して、暗唱してたらしい(そんな彼女が大好きだ)。

 

本当にすてきな詩だったので、そして、私も何度でもみたいので紹介。

 

 

「わたしを束ねないで」 新川和江

 

わたしを束ねないで

あらせいとうの花のように

白い葱のように

束ねないでください わたしは稲穂

秋 大地が胸を焦がす

見渡すかぎりの金色(こんじき)の稲穂

 

わたしを止めないで

標本箱の昆虫のように

高原からきた絵葉書のように

止めないでください わたしは羽撃(はばた)き

こやみなく空のひろさをかいさぐっている

目には見えないつばさの音


わたしを注(つ)がないで

日常性に薄められた牛乳のように

ぬるい酒のように

注がないでください わたしは海

夜 とほうもなく満ちてくる

苦い潮(うしお) ふちのない水


わたしを名付けないで

娘という名 妻という名

重々しい母という名でしつらえた座に

座りきりにさせないでください わたしは風

りんごの木と

泉のありかを知っている風

 

わたしを区切らないで

,(コンマ)や .(ピリオド)  いくつかの段落

そしておしまいに「さようなら」があったりする手紙のようには

こまめにけりをつけないでください わたしは終わりのない文章

川と同じに

はてしなく流れていく 拡がっていく 一行の詩